腎臓病についてのお話し
シリーズ 最終回 食事について
第1回では、腎臓は2つありますが、残念ながら片方だけ悪くなるのではなく、両腎臓一緒に悪くなります。
腎臓には濾過器糸球体という物があり、体のいらなくなった水分、物質(老廃物)等を捨てて、尿細管で必要な物質を再吸収する大事な腎臓だとお話ししました。
第2回では、腎臓の役割には老廃物の除去、アシドーシスの改善、体液の調整、電解質の調整、血圧の調整、再吸収(必要水分・物質など)、尿の生成、ホルモンの分泌など色々とありますが、そのすべてを腎臓がしていますとお話しさせていただきました。
第3回では、腎臓病は検尿・血液検査(クレアチニン・尿素窒素)でわかる、もっと詳しく検査するならe-GFRの分類についてお話ししました。
また、症状も病状が進まないとなかなか発見できないこともお話ししました。
前回は、腎臓病が進むにつれて合併症のリスクが高くなる。
合併症としては、脳卒中、心血管障害(心筋梗塞、心不全)閉塞性動脈硬化症、感染の割合が高くなります。原疾患が糖尿病の患者様は網膜症で失明の危険もあります等と書かせて頂きました。
今回は食事のお話しです。
一般的に慢性腎臓病(CKD)と診断されますと、食事療法で塩分制限、蛋白制限を主とした指導をされると思います。
CKDステージが上がる程制限がきつくなります。
前にも話しましたが、専門医によっては、ステージ1でも食事療法をした方が良いと言う先生もおられます。
さらに腎臓が悪化し腎不全になると蛋白制限、塩分制限の他に水分制限にカリウム制限、リン制限など制限されますが、適切なカロリーも重要となります。
腎機能が失われると、老廃物の除去ができなることはお話ししましたが、その状態は色々ありまして、例えば老廃物は除去されないが、水分だけは暫くの間、多く尿量は出ている状態もあります。その場合、水分制限はされず、尿量分だけは摂取するよう指示があると思います。
患者様は尿がいっぱい出ているから大丈夫と誤解している方がおられますが、これは一時的に多尿になることはあっても老廃物が除去できてない薄い尿だけが出ているだけで、腎不全は避けられないのです。重篤にならない内に医師に相談し指示に従ってください。
蛋白質制限について
なんで蛋白制限が必要か?
脂質、糖質はエネルギーとなって代謝されますと水と二酸化炭素となり排泄されます。
蛋白質は代謝されると水と窒素として排泄されるのです。その水と窒素は腎臓でろ過されますが、腎機能が悪くなると排泄ができないことは前にもお話ししましたので制限されることはお解りと思います。
蛋白質の摂取量は疾患、年齢、生活状態、一般状態などで摂取量は変わりますので医師の指示を受けてください。
カロリーは原疾患などで摂取量は変わりますが、一般的に1日の摂取量は25~30kcal/kg つまり50キロの人だと1500kcal程と思います。
カロリーも生活状況などで変わりますので医師の指示を受けてください。
一日3食規則正しく取ることが重要です。
塩分制限について
塩分を多く取り過ぎると浸透圧によって、喉が渇き水分を摂取するようになり、血管は膨れ上がり、血圧が上がり心臓に負担がかかり色々な重篤な合併症を引き起し、死に至る可能性もあります。
基本的に塩分摂取量の目安は1日6g~7g程度を目安にすると良いと思います。
食品に含まれる塩分量の計算方法は
食品にはナトリウム〇〇 mgと記載されておりますのでナトリウム量で塩分量の計算が出来ます。
ナトリウム mg を食塩相当量(g)に変換するには
計算式 : mg×2.54÷1000= gになります。
(例:400mg×2.54÷1000= 1.02g)
400mgのナトリウムは 約1gと思って頂ければ計算もしやすいと思います。
水分制限ついて
前にもお話ししましたが、腎臓でろ過されませんので、飲んだ分だけ体にたまり水ぶくれの状態になり呼吸困難から死に至りますのでご注意ください。
水分は飲水分、食事に含まれる水分、代謝水(エネルギーとして燃やされた排泄物)になります。
カリウム制限について( 血液中の正常値は3.5~5.0mEgl/L )
余分なカリウムは腎臓でろ過されますがその機能がなくなると体内に貯まります。
カリウムは通常細胞内液に多く存在し、血液中には必要最小限存在します。
なぜならば、カリウム6.5~7.0mEgl/Lを超えると心臓に負担をかけるようになり不整脈を起こすことがあります。最悪心停止と言う事もあります。
カリウムの多い食品は
生野菜、アボカド、果物、生魚、芋類、豆類、木の実などが多いとされていますので注意して食べて下さい。
腎臓が少しだけ悪くなっただけと思っていませんか! 油断は禁物、腎臓病はどんどん進行しています。
慢性腎臓病CKDについてのお話は、如何でしたでしょうか?
大変な病気ですネ!
患者さんが自分の病気を理解して治療すれば、きっと良い方向に向かいますので、透析療法になるのを少しでも遅らせるためにも、専門医と相談して良い治療を受けて下さい。
まだまだ色々注意することはあると思いますが、私の経験から慢性腎臓CKDのお話を5回に分けて書かせて頂きました。ご参考になりましたでしょうか?
宜しければご意見をお聴かせ頂ければ幸いに存じます。
今後、機会があれば透析療法に関して、お話が出来ればと思っております。
今後とも宜しくお願い致します。
小池 洋明